令和3年7月6日~8日エイドケアカレッジの強度行動障害支援者養成研修をzoomにて受講してました。
障害者福祉に関わって約10年。これまで強度行動障害を持つ方との関りもありましたが、研修を受けたのは初めてでした。今回の研修を受けて、自分の中での気づき、そして学びになったことをそれぞれ上げていきたいと思います。
初めに気付きを1点。
大変お恥ずかしいことではあるのですが…
障がい者の方と関わった10年の中では、色んな支援を見たり、実践したり、また支援の計画を立ててみたり。たくさんの経験をさせていただいてきました。しかし、この経験に頼ってしまい、大切な工程をすっとばしている現状に気がつきました。
研修の中では例として実際の強度行動障害を持つ方の事例が出されています。その事例を見て、私はすぐに、こうしてみたらどうだろうか、これはどうだろうか、と支援策ばかりが先に頭に浮かんでしまったのです。実はそういう傾向にあるな、というのは自分でも感じていたことがあり、気を付けないといけないな、という自覚はあったのです。ですが、今回のことではっきり危険だ!と気が付きました。
利用者の方は同じ障害であっても、皆それぞれ違う特性や性格、生活環境があります。まずは、何が問題なのか、どんな課題があるのか。それが分からなければ適した支援など考えられないのです。しっかりご本人のアセスメントを行い、特性や環境に合わせたご本人だけの支援を考えていくようにしなければならないと再確認いたしました。
何故、今この行動をとっているのか、何かきっかけがあったのか。その時どんな状況や環境があったのか。事例を見た時に、もっと深く、観察、聞き取りがしていけるようにしていきたいと思います。
そんな当たり前の事か!と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、この当たり前のことが知らない間に私の中で疎かにされていた事に気が付いたのです。このタイミングで、自分のこの危険な傾向が認識できたことはとてもよかったと思いました。
次に学びを3点。
1 記録について
どこの事業所でも書かれている支援の記録。研修をうけて、私の思う記録のポイントを4つにまとめまてみました。
①誰が見てもわかりやすい言葉と表現で客観的に。
記録は他の支援員との情報共有にも利用されます。そのため、誰が見ても同じ状況が浮かぶよう主観を入れず客観的な状況を記載していくことが重要です。また、家族や行政の方が見ることもあります。分かりやすい言葉と表現で記載していかなければなりません。
②記録の目的を明確に。
日々の記録には、いくつかの意味があります。一つは現状を記録しておき後から振り返る材料にする。また、①であげた支援員同士の情報の共有。そして次の支援につなげていく大切なアセスメントになる。私自身が記録を取ってきたなかで、目的まで深く考えられていませんでした。記録をとる支援員全員が、何を目的として記録をとっているかを明確にしておくことで、記入しておくべき事の判断がしやすくなるように思います。
③短時間で時間をかけず
記録が重要なものだとは分かっていても、日々の支援は多忙で記録に長い時間をとることは非効率です。なるべく短時間で書ける工夫をすることも大切です。記録自体を書きやすいフォームにする。チェック項目を作り記入しやすいようにする。また、記録をどこでどのように書く(入力する)かも重要です。その場に合わせた記録の取り方を検討していく必要があると思います。
④決められたワードや記号で振返りやすく
先ほどにもありましたが、過去、どのような状況だったのか後に振返ることがあります。その時に検索しやすいよう、後からさかのぼる可能性のある項目などは決められたワードや記号を入れて記録をする(【他害】など)と後から効率よく振返ることができます。
2 支援について
事業所ではサービス管理責任者が個別支援計画を作っていますが、ご本人の状況にあわせ、支援の手順書も作成していきます。
研修では、ご本人の困りごとに対して(周囲の人の困りごとではない!)ご本人の特性やどのような環境、状況があるか、詳細なアセスメントをとり、氷山モデルを使って支援を考えました。支援方法が本人の強みの特性を活かせているかも重要です。
また何よりも、どんなに立派な計画を立てても、支援者がチームとなり、同じ目的・理解で構造化された統一した支援を実践しなければ全く意味がなくなります。このチームには事業所の職員だけではなく、関係機関はもちろん、医療や役所、ご家族なども含まれています。その為、誰が見ても分かりやすい表記で、イメージしやすい端的な表現を使い、支援手順書を作成する必要があります。
GHや入所施設になると、チーム全員が集まって会議をすることが難しくなってきます。研修で挙げられていた、計画を作る際、アセスメント(各人の気づき)を付箋に貼って全員で氷山モデルを作り上げると言うのは良いアセスメントを得ることだけではなく、とても効率的で、尚且つ支援員の計画への意識を高めることができる方法だと感じました。
3 身体拘束について
身体拘束については、もちろんしないことが大原則でありますが、緊急やむをえない場合(切迫性、非代替性、一時性)も出てくることが考えられます。職員全員が同じ認識をしておくことがで、身体拘束をせず職員の安全も守れる場面が出てくるとのお話がありました。
例えば、利用者Aさんを殴ろうとしている利用者Bさんがいるときに、そのAさんを止めなくても、Bさんや周りにいる利用者さんを移動させることで身体を拘束せずに他害を防ぐことができるかもしれない。無理に止めようとすることで職員が怪我をするリスクもある。というお話でした。
その場にいる全員が同じ認識であれば、瞬時に他の利用者さんを移動させる連携した行動が取れるかもしれません。ある程度想定される場面でどう行動するべきか。新人の職員も含めた全員が同じ認識を持っておくことで、事故を防ぐことができる。事業所での研修の重要性を感じました。
また、身体拘束の可能性があるときには、事前に個別支援計画に入れ、全員に周知しておく。必ず身体拘束の記録を残すことも重要になってきます。
あわせて、虐待の起こらない環境づくりとして、職員のストレスマネジメント、話しやすい環境も大切にしたいと感じました。
所感
強度行動障害の方の支援では、統一された支援をすることで支援の成果が得られると考えられます。そのためには、関わっている支援員が共通の認識を持ち、支援方針がしっかり理解されていることが必要であると考えます。
支援チーム全員が同じ方向に向かって取り組める、自分から取り組みたいと思ってもらうためには、なぜこの支援を行うのか、どのような望ましい行動を目指すのか、特性に基づいた根拠をチームにわかりやすく説明しておくことで、統一された良い支援に繋がって行くと考えました。支援体制、計画の共有方法など日々のシステム作りやマネジメントも重要になってくると感じました。
そして、利用者の方の支援にはゴールがあって、今、どの段階の支援をしているのかがわかるようにしておくこと。支援計画はいつでも手元で確認できるようにしておく工夫や、忙しい時でもすぐに確認ができるように、端的にわかりやすく記入しておくことも重要だと感じられました。
これらのことを念頭におき、今後の支援に活かしていきたいと気持ちを新たにしました。
船津 理恵子