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サンクスシェアケース会議(R2.10.1)

サンクスシェア事例検討会議(R2.10.1)

ケース検討会議マニュアル 

 サンクスシェアでは月に1回2時間の定期事例検討を行っている。
 会議の整理の意味も含めてまとめてみようと思う。

1 事例概要 

 ・知的障がいの中学1年生男児A・小学4年生男児B
 ・両親はともに知的障がい 就労継続支援B型事業所通所
 ・祖母70歳(キーパーソン)、祖父   計6人家族
 ・主な行動問題:A児超多動。ふざけて器物破壊やほうちょうを持ち出しての他害あり。B児はそれをみて模倣。加えて、ちょっかいを出された父親がまじげんか。母は、ことばでの暴言叱責。

 


2 検討課題 
 キーパーソンである祖母が、骨折で入院中。2人の児童は、日中は、学校と放課後等デイサービス、そして、夜間は、31日間の特例短期入所中。
 やがて退院となるタイミングに向けて、相談支援として調整すべきことはなにか?

 


 3 検討 
 事例検討の手法をほぼ専門的に学んでいない我流であるが、
  人差し指 できる限り簡素に
  手(チョキ) できる限りシステマティックに

 を意識して事例検討することにしている。
(※ 専門的にスーパーバイズを受けたいと心底思っている)

 事例の本質的な捉えを決してないがしろにしてはいけないが、私たち相談支援専門員は、分析家ではない。目の前にいる困っている人に対し、いかに寄り添い、現実の生活における提案ができるかが勝負だと思っている。このようなことから、
  1 事例検討用の詳細な資料準備等にできるだけ時間をかけることなく、
  2 いつ、どこで、だれが、どのように、なにを支援するのか明確な役割分担を決める協議をする
ことを重視して実施している。

 今回の事例検討では、次のような手順を経て検討していった。

 ① 事例の説明(5分ほど)
 ② 事例への質疑(10分ほど)
 ③ 家族支援のアイディア出し(30分ほど)
 ④ アイディアの検討(45分ほど)
  ・ 退院直後に必要 → 将来的に必要
  ・ 家族の希望に迎合 → 望ましい支援体制
  上記の2軸を視点としてホワイトボードに記述
 ⑤ 退院時の支援調整の具体的手順と役割分担の協議(30分ほど)

 まずは、③で、考えられる支援アイディアについて、ない知恵の中から絞り出しあった。


 ところで、私たち相談支援専門員は、蓄積している知識量もさることながら、思考の柔軟性が大きく問われる。
 りんご いかに幅広い視点からものごとを考えることができるか?
 イチゴ いかに幅広い可能性やリスクを想定することができるか?
が支援のできを決める。

 この引き出しの多さとふところの深さを兼ね備えるため、個人的には、日頃から思考をトレーニングすることがとても重要だと考えている。固定観念にとらわれ、『こうあらねばならない』が強い相談員は、自分自身がたどったこともない人生を歩んでいる人、住んだこともない世界で生活している人の相談になんかのれるはずがない。また、相談者の想いを遮ることなく傾聴できても、『共感するだけ』で止まる相談員も不十分と言わざるを得ない。聴くだけで、改善に向けて取り組む具体的な提案ができないのでは、ただの一般人に過ぎない。

 このようなことを考えると、私たち相談支援専門員は、『なにかに対し常に疑問を持ち』、まずは『疑って』みたり、『違った視点から物事を考え』たりして、それを『適切な表現に載せて発信』することに長けていなければならない。日々、瞬間瞬間がトレーニングの連続である。


 話をもとに戻そう。
 ④⑤で具体的に意見交換を経て、今回の検討課題である「退院時に調整すべきことはなにか?」に話を進めた。「実際に実行可能なのか?」「だれが実行するのか?」などについて協議し、「どのような手順で、祖母に提案するのか?」等を協議した。

 この協議において、最後の大きな壁として立ちはだかったのが、『意思決定支援』だった。
 私たちの独りよがりでつくった支援の提案を決して押し付けてはならない。だからといって、相手から発信された表面的な要求をすべて呑んでいたら、家族にとっての安心や幸せから遠ざかってしまうかもしれない。
 一つ一つの提案について、嘘偽りのない『適切な情報提供』を丁寧に行い、押しつけでもなく、要求の丸呑みでもない「適切な妥協点」にたどり着かせるための用意周到な準備が必要であることを改めて共通確認した。

 このときの大切な視点として踏まえなければならないことは、

【直近の現実的な支援体制】から、【理想とする支援体制】
 
というゴールに向かって、場面場面での支援体制の
 スモールステップを組み立てる

ことであると考える。Aという最初の現実的な支援体制でうまく乗りきることができれば何ら問題はないが、なかなかその確率は高くない。そこで、「Aの体制でうまくいかなければ、次のステップとしてBの支援体制で取り組みましょうね」「Bでうまくいかない場合は、Cで・・・」と将来的な進む道を『最初に提示してみてもらっておくこと』を提案したい。

 このように、ある程度の方向性を共有しながら支援体制をステージアップしていけば、なにか問題が起こるたびに、一回一回、一から支援体制を作り直すなんてことをしなくて済むようになり、迅速かつ適切に支援を進めていくことができるようになると考える。

 あわよくば、本人や家族が、支援者の手を離れ、自立的にこのステップに沿って生活を変化させていくことも可能かもしれない。いや、目指していかなければならない!(エンパワメントの視点)

 このようなイメージを文章化して、サービス等利用計画の総合的な支援の方針欄に記述されていることが、サービス等利用計画案の望ましい姿なのだと思う。

 


4 まとめ 

 私たち相談支援専門員は、面談や電話の中で、さまざまな「判断を求められる場面」に遭遇する。その人の人生を左右するほどの重要な判断をしなければならないタイミングも突然訪れる。このとき、判断を誤れば、その人の人生の方向性を狂わせたり、最悪の場合信頼を失いサービス利用契約が終了することもある。
 話の流れの中で瞬時に行わなければならない判断の精度を上げるためにも、今回のような事例検討の場で、しっかり時間をかけて考えを練り上げる経験・トレーニングを積んでおくことがとても重要だと改めて気づかされた。

 ひとつひとつの事例について、時間をかけて整理し、そこでの思考経験を日々の相談支援に活かすこの取り組みは、ますます力を注いでいきたいと思う。(文責:相談支援専門員 田中 聡)

 

 
福岡市東区で障がい福祉サービスに携わる人を育てる会社
 合同会社サンクスシェア 2016年4月4日 創立