相談支援専門員の資質向上のためのコンサルティングでお世話になった相談支援室NOMAさんに考える機会をいただいたので綴ってみます。(元記事 👉)
「安定的に運営する責任・・・」
確かに!と思います。
うちは事業所を閉所するから、多くの契約者の支援を放り投げあとはよろしく、とか、たくさん人数を抱えすぎたので、少しおすそ分けで引継ぎをお願いします、とか、「おいおい…」って思うことが横行している相談支援事業・・・
まさに「責任」を軽んじているがゆえに起きていることと言えるでしょう。
ゆゆしき問題点であることを再認識すると同時に、しかし、なぜこのようなことが起きやすいのか、その現状も改めて再確認しておこうと思います。このことは、TEACCHやABAではありませんが、「なぜそれが起きているのか?」の要因をしっかりと探って特定すれば、改善策は見えたようなものだという考え方に乗じます。
① 営業不努力の問題
弊社サンクスシェアは、私がひとりで興した相談支援事業所です。お恥ずかしい限りですが、前職の社会福祉法人を飛び出すことは決めたものの、何をどのようにやりたいかをあいまいにしていたこともあり、「資格」と「適切なスペース」さえあれば開業できたことがこの事業をスタートした理由なんです。相談支援事業に命を懸けている相談員さんごめんなさいっ(^-^;
投資資金がほぼ必要なく開業できる計画相談のニーズは、3年経った今も途切れることがありません。平成26年にすべての障がい者に計画相談をつけろと決められて以降、福岡市では90%を超える計画相談率となった現在も依頼がバンバン来るのは、もともと相談支援事業所が受け皿として足りない上、新たに福祉サービスの利用を開始する人が後を絶たないことと、先に挙げた例のように、一旦始めた相談支援事業が閉じるために移管されてくる方々がいらっしゃることが理由だと思われます。
これから先未来永劫この状態が続くとは言いませんが、つまり「営業努力」をほぼ求められずに仕事にありつけるという現状にあります。
ここに、「責任」を軽んじる一つの要因があるように推測します。
血のにじむような顧客集めをせずして、相手側からある日突然「計画相談受けていただけますか?」と低姿勢で打診があり、もったいぶって「大丈夫ですよ」って回答し、「もう何件も電話してやっと受けていただけました!ありがとうございます!」なんて言われようもんなら、そりゃ誰だって上から目線になっちゃいそうです!
もともとやっとたどり着いた大切なお客様ではないために、手放しても惜しくない感がありはしないでしょうか?
そもそも、ひとりの人生を左右する重要な影響力をもつ者としての自覚が軽視されている背景がありそうです。
② 低報酬単価の問題
福祉の業界で新規制度が立ち上がる際、規制緩和して新規参入をばんばん推奨し、やがて自然淘汰を目的に、報酬単価を下げ、規制を強めていく手法がとられることが多いですが、相談支援事業は最初から報酬単価は極低設定のままです。そのため、相談支援の重要性に心を寄せる社会貢献心の強い、こころある法人が、半ばボランティアの気持ちで開業するケースが大半です。
ここに「責任」を軽んじる2つ目の理由が潜んでいると考えます。
とても悩ましい問題ですが、本体法人の持ち出しで相談支援事業を開業した場合、おそらく法人内でもかなり仕事のできる人材があてがわれることが多いと推測します。資格さえあればだれでもいいというわけにはいかないことは、管理する側からしても最低限のマナーをわきまえています。
そのような人材が、能力を発揮し、相談支援事業にのめり込めばのめり込むほど、相談件数を抱え、本体への収入は増えてはいきますが、一方で、その相談員さんは、本体法人の事業にはほぼかかわりがなくなり、外勤ばかりで何をしているかさえ管理者はもちろん、同僚にも理解されなくなります。本体事業に貢献しにくい優秀な相談員を手放しで喜ぶ経営者はなかなかいないのではないでしょうか?
このとき、相談支援事業により、本体法人に入ってくる収入が十分であれば問題を大きくしないのでしょうが、人件費を賄うのに収支がとんとん程度となれば、相談支援事業への積極性が薄れていくのを引き留める理由はどこにも見当たりません。
つまり、本体法人が相談支援事業に後ろ向きにならざるを得ない経営上の問題があるということです。
③ 相談支援専門員のモチベーションの問題
本体法人持ち出しの相談支援事業所の相談員さんの立場から考えます。
いやらしい考え方するな!と怒られそうですが、ひとりの相談員さんが担当する計画相談の契約者数を200人にしようが、20人にしようが、相談員さんは、本体法人から月額の給与をもらっている以上、モチベーションの担保は、よほどのメンタルトレーニングを積み重ね続けている人でなければ、難しいと考えます。
法人内で仕事がかなりできる人であっても、計画相談の量と質の担保を両立させるためのモチベーションの維持は、相当の困難が待ち受けていると思います。
「おれ、先月は請求15件で、今月は30件がんばったけど、給料一緒だもんな・・・」って私だったら間違いなく思います(^-^;
さて、3つの「責任」軽んじる論を並べましたが、大切なのは、こんなことを分析して愚痴を言ってる場合ではないということです。
最初に述べたように、要因をある程度抑えたのなら、その解決策、改善策を講じることが重要です。
実は、⓵の営業不努力の問題と②の報酬低単価の問題は、現状がそういう仕組みで動いている以上、今すぐに何かできることは何もありません。
というわけで、改善に取り組める余地があるとするならば、③の相談支援専門員のモチベーションの問題です。これを解決する道があるかどうかを探りましょう!
ここにアプローチする提案は、2つです。
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本体法人の持ち出しでない独立した相談支援事業所を開業すれば、相談支援の件数(請求)に応じた給与体系を構築することも可能です。
そうすれば、自分が成果を出せば出しただけ自分への報酬が反映されるというモチベーションを確保できます。
もちろん、働くモチベーションは、お金だけではないなんて大前提のことは、この場では議論しません。
いい仕事をしたら、それに見合った対価を得ることができるという経済の当たり前の原理の確実な履行を重視するということです。
2のように、法人内で勤務を続けたとしても、上記の様に給与に、実績手当等のプラスアルファをつけるだけでもずいぶんんとモチベーションを確保できるように思います。
相談員は、法人外に出て仕事をすることがほとんどなので、まわりの行政を始め関係する多くの機関との連携を進める大きな広告看板でもあるわけです。ここに一定の評価をして、関係機関連携手当なんてのを創設してもらってもいいかもしれません(^^)/
いや、しましょう!
相談支援事業所サンクスシェアは、どこの法人にも属さない単独相談支援事業所としての存在感を今後も大切にしていきます。
とはいうものの、この極低報酬単価では、経営が恐ろしく困難です。
これを乗り越えるためには、相談支援専門員、もしくは、相談支援事業所の強みを活かした人材育成事業で経営安定を補てんする(支える)ことを模索し続けます。
私自身、まだまだではありますが、相談支援室NOMAさん、相談支援専門員寺川さんに追いつくべく、相談支援専門員という立場の強みを活かし、制度にも明るく、最新情報にも明るく、障がい児者支援のスキルにも明るく、福祉事業を総合的にプロデュースするけん引役としての能力を発揮し、そこに報酬が発生するという、
「相談支援事業所としての適切なビジネスモデル」
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を作り上げたいと思っています。
【相談支援事業所サンクスシェア】
〇 相談支援専門員 野郎3名(ぜんぶおいちゃん)
〇 R1.9.28現在 契約者169名
〇 一人の相談員の契約者目安75名(3カ月モニタリング計算)
〇 計画相談事業外収入 月平均10万円を目標
(一般社団法人九州発達障がい支援協会=福祉サービス事業所人財育成研修提供機関の代表理事役員報酬を含む)
※ 将来的には、この月平均額は、うちに所属するそれぞれの相談員の副業としての収入源になることを目指します!
今後は、相談員さんの常勤雇用化、特定事業所化、相談員増員を準備しています。
どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
サンクスシェア 代表社員 田中 聡