第5回KYOUKOU(強度行動障がい勉強会)報告
1 日 時 平成28年10月4日(火) 19:00~20:10
& 第二部 ~22:00
2 場 所 あいあいセンター(福岡市立心身障がい福祉センター)福岡市中央区長浜1丁目2-8
3 参加者 15名
4 内 容
「行動障がいの考え方2」 スピーカー:春田聡氏(福岡市社会福祉事業団か~む職員)
今回も、「強度行動障がいとは何か?」について、基礎を学んだ前回を踏まえ、「氷山モデルとは?」のテーマに沿った演習を通して、強度行動障がいの基本的な考え方を学びました。
前回に引き続いてスピーカーを務めてくださった春田さんは、国の研修を受講し、その内容を広く伝達する資格をもっているKYOUKOUメンバーです。「今日はリラックスしながら!」と意気揚々、終始温かい雰囲気で、しかし、視点はしっかりと抑えながらの進行でした。
今回も、初めての参加者5名を迎えての開催でした。あいにくの台風接近のため、大事をとって参加を見合わせた方が名いらっしゃったので、このKYOUKOU勉強会も20名規模のグループになりつつあります。
今後も、人数の増減に関わらず、「一人で学ぶより二人で学んだ方が楽しくてためになる」をモットーに、淡々と継続していきます(^^)/
さて、前回を踏まえた今回の内容も、強度行動障がい者の行動問題を考える上で、『氷山モデル』という考え方があることを知るということでした。
そこで、勉強会の前半では、前回で学んだことをさらっとおさらいし、そして、後半では、2つの事例を通してその理解を深めました。
まずは、春田さんが寝ないで考えたという、「フィクション」の事例1…(^-^;
運転中、急にアクセルを強く踏んで危ない運転をしてしまったという行動の問題は、いったいなぜ起きたのか?
① もともともっている本人の特性は?(強度行動障がい者の場合は障がい特性)
② どのような状況下にあったのか? その環境要因
事例1を通して、ふたつの窓から行動の問題を考えるという氷山モデルの考え方をみなさんで共通確認したのでした。
今日の研修の進め方として、事例1で演習のための練習を行い、次の事例2で少し突っ込んで考えるという段階的な流れが、理解を深めるための工夫された手法でした。
次に、事例2…(^^)/
自閉症の診断を受けた最重度の知的障がい者が、自立課題に取り組んでいる最中に、奇声を発して机を叩く行動はなぜ起きたのか?
6人のグループに分かれ、まずは個人作業、そして、司会、記録、ワーク後の発表の役割を決めて、早速演習スタート。
みなさんそれぞれに考えた、①特性 及び ②環境要因 を適切に出しあいました。
片方のグループの司会の役を担った私は、それぞれのみなさんが発表してくださった考えに対し、そう考えた背景、つまり、その考えは「どんな視点」から出てきた考えなのか? を探りながら聞いたり、少し、質問させてもらったりしました。それは、当然のことながら、この「氷山モデル」の考え方を学ぶのは、今日のこの事例での正しい回答を導き出すことが目的ではなく、これから先直面するであろうさまざまな行動問題に対し、この考え方を用いて、より早く、より適切に対処できるようになることが目的です。こういうことから考えると、① 障がい特性にしても、② 環境要因にしても、考える際には、どんな視点から、どんな項目から考えるのか、概観できていないと目の前の現象、つまり、氷山の見えている一番上の部分に振り回されてしまいます。水面下に大きく広がっている、その行動を動かしているものが何かを考える際、いったいどんな方面から、どんな視点から考えていくことが大切なのか、そこを自分なりに明らかにしておくことが重要となるのです。
スピーカーの春田さんは、解説の中で、『ⅠCF』の考え方を紹介されました。私も、この氷山モデルでの考え方を学ぶ際には(というより、障がい者の支援全体を考える際にも…)、①障がい特性を考えるにも、②環境要因を考えるにも、たいへん参考になる視点だと思います。
このICFの項目内容は、人の行動が、表に出てくる際の背景として考えられる、ほぼあらゆる要因が網羅されていますので、行動問題を分析する際の大きなヒントになることと思います。
ICF:International Classification of Functioning, Disability and Health(国際生活機能分類)
(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/08/h0805-1.html)
さて、ICFの内容項目を視点として参考にするとしても、この作業は、あくまで推測にしかすぎません。
今日の事例2では、(春田さんが寝ずに考えましたから…)とてもていねいに作られていました。文章から読み取る事例分析であるため、① 障がい特性にしても、② 環境要因にしても、わかりやすいヒントがしっかり情報として記述されていました。グループワークでは、記述の中から、その特性なり要因なりをことばとして拾っていけばよかったので、比較的「答え」を見つけやすくなっていました(^^)/
ところが、実際の行動問題に直面したときは、自分自身で、氷山の一番上に出てきた現象の背景にあるものについて、ヒントが何もないところから探り始めなければなりません。
そう考えると、今回の勉強会は、もう一歩先に進んでいく必要性を強く感じました。
つまり、
① 行動問題を考える際には、「氷山モデル」という考え方がある
② 氷山モデルでは、① 障がい特性 と ② 環境要因 から背景を探る
ここまでは、わかりました。
しかし、繰り返しますが、実際の行動問題に直面したとき、表出した行動の背景にある原因を探るためのヒントは、最初は何も用意されていまん。
「この ① 障がい特性 の〇〇と△△…と、 ② 環境要因 の☐☐と??…とが、関連しあったために起きた行動なんだ!」と理解するためには、なにが、そうさせているのか、推測をしなければなりません。例えば、起きた行動の場所はどこか? 時間帯はいつなのか? そのときまわりはどのような状況だったのか? 本人はどのような心身の状態だったのか? だれがかかわっていたのか? などなど・・・
ある程度の推測をするための視点が明らかになっている必要性がありそうです。
行動問題に対処する能力が高い、いわゆるセンスが高い支援員さんは、このあたりの視点について、これまでの経験と感覚とで、ある程度仮説を立ててから、支援に携わるので、本人の行動に対して適切に対応できる確率が、力量のない支援員さんに比べてぐんと高いのです。
そこで、氷山モデルについて、その背景をさぐる方向性について共通確認できた今回の勉強会に引き続いて、次のことが課題となって浮かび上がってきます。
それは、
① 【障がい特性】や【環境要因】を推測する際の視点探しをどのようにすればよいか? ・ 具体的な視点にはどのようなものがあるか? ・ 把握した視点について、具体的にどのように推測を進めていけばよいか ② 推測した視点について、どの視点の重要度が高いのか? |
具体的な支援の方向性にむずび付けていくことが、究極の目的ですので、上記の①で、視点をもれなく挙げただけでは、あまり意味がありません。上記の②の観点で、どの障がい特性と環境要因とのからみが、本人の行動の背景として重要度が高いのか見抜くことが重要です。つまり、行動問題を引き起こしている要因と考えられることを仮に推測できたとしても、それが、たいして重要でないものだとしたら、それを改善した取り組みをいくら一生懸命やってもあまり効果が表れないということになります。
ということで、今後のKYOUKOUの勉強会では、以下のような内容について、学びを深めていくことが求められると考えています。
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そして、具体的な行動問題への適切な支援に結び付けていくことを目指します!
学んだことを積み重ね、また、次の新たな内容に学びを進めていく・・・
今後の学びが、また、楽しみです!