自閉症スペクトラムの診断がある男性が、日中活動先で度々パニックを起こしている状況に悩んでいたとの事例。
あるとき、日中活動先の支援者からの情報で、通所が終わって帰る際、立ち止まってしばらくコンビニを眺めたあとに帰っている様子にふと気づいたとの内容が相談員さんのもとに寄せられたとのこと。
相談員さんは、早速家族に事情を伝えてアセスメントを詳細に行ったところ、過去に自分でコンビニへ出かけ好きなものを買物する経験があったけれど、あるとき、店内で他の客と大きなトラブルが起き、その後ひとりで買い物に行かせないという制限が与えられていたことが判明。
これを受けた相談員さんは、どのようにしたら再び本人が買い物できるようになるかについて知恵をしぼり、本人が通所から帰る時間帯に勤務しているコンビニの茶髪のピアスした店員さんに対し、お金は払えるが、適切におつりを受け取って財布に入れるという行為が難しい本人のため、おつりが発生したら、こちらで準備した本人専用の貯金箱に貯めていってもらうという特別待遇をお願いしたとのこと。
店長さんと店員さんは、快くこの特別待遇を承諾してくださり、本人が通所帰りに買物ができるように調整を図ったとのこと。
すると、これまで頻繁に起きていたパニックが激減したそう。
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「私たち障がい者は、失敗するチャンスをたくさん制限されてきた・・・」
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相談支援専門員 松本
九州地区障がい者相談支援事業合同研修会 熊本大会 参加報告
令和元年12月5日~12月6日にかけて行われた「九州地区障がい者相談支援事業合同研修会」へ参加してきました。
研修会は4部構成で参加者は500名を超えており、会場が狭く感じるほどです。研修の内容がとても濃く、あっという間の二日間でした。
第一部は日本相談支援専門員協会代表理事の菊本氏による「これからの相談支援専門員に求められること」をテーマにしての講演を聞かせていただきました。
地域共生社会づくりの経緯から始まり、総合的(包括的)相談支援、ケアマネジメントによるチーム作りと価値、ソーシャルワークについてお話しいただきました。
中でも特に心に残ったのは、「多様な価値観を支えるためのチーム作り」の中での「価値の物差し」のお話でした。ケアマネジメントを行う上で、相談支援専門員がいくら個人で能力が高くても、その能力には限りがあり、チームで情報共有を図り、問題の発見から解決までを追いかけることでケアマネジメント効果を高め、長期的な視点で質を高めていくというお話でした。
第二部では実際に障がいをお持ちではありますが、社会の一線で活躍されている方のシンポジウムでした。脊髄性筋萎縮症で寝たきり芸人の「あそどっぐさん」、うつ、不安障がいで精神保健福祉手帳3級をお持ちで生活支援センターにて精神保健福祉士として活躍されている「楠 達雅さん」。
お二人の話を聞かせていただく中で、それぞれの悩みであったり、不安がありながらも、それらを受けとめた上で活躍されているお二人の姿に胸が熱くなりました。
第3部では厚生労働省 障がい福祉課地域生活支援推進支援室相談支援専門官 藤川氏による行政説明が行われ、今後の障がい福祉の動向について説明をいただきました。
第4部にて十勝障がい者総合相談支援センター所長 門屋氏による「私が相談支援専門員にこだわった理由」というテーマについて講演いただきました。ソーシャルワーカーとして勤務されていた時に感じたことや学びを経験として取り組まれてきたこと、現代における精神医療の現実や状況についてお話しいただきました。
今回の合同研修に参加し、九州の中だけでも、これだけの相談支援専門員が集まり、一緒の空間で話を聞いたことで、これだけ多くの人が、各地でそれぞれの地域特性がありながらも、同じ相談支援専門員として日々邁進していることを実感しました。今回の研修参加人数が500名を若干超えていたことから、応募者数はもっといらっしゃったことと思います。来年は福岡での開催です。どんな研修になるのか、どんなお話が聞けるのか、楽しみです。