運動をメインにした活動の際には、集団ファシリテーターとして子どもたちへ適切に、そしててきぱきと指示や誘導をしています。そして、あるとき、すっと場を離れて、次の活動への残りの時間を示す表示タイマーをセットしたり、次の活動へすぐに移行できるようスペースや道具の準備をさりげなくこなしたりしている・・・!
0 先の予定が記憶されている
1 現在の状況をよく観察する
2 次にやるべき内容を決める
3 どのタイミングでやるかを決める
4 実行する
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まずもって、0番の予定のインプットについては、当たり前過ぎる気もしますが、個人的にはかなり重要な項目だと考えます。いくらてきぱきしているタイプの人でも、このインプットがなければ、ある意味なにもやれない(しない)ことが起きてしまいます。
この思考パターンを整理しながら改めて考えさせられたことは、先にやることの意識化について、スケジュール管理と併せてしっかりやっておかなければ、先のことを考えた行動ができないということです。
ふと、障がい児の支援や相談支援における知的障がい者へのかかわりの中で、この部分に困難さがあるがゆえに、まわりがいくら働きかけても適切に自分のやるべきことを適切なタイミングでやれないことが発生してしまっている事例がいくつか思い浮かんできました。
つまり、なかなか先取りした行動ができないことに対する支援においては、
・ 先にやるべきことを明確に洗い出し、
・ 適切な順番付けを行い、
・ しっかり『意識化』(記憶にとどめておく)
できる支援が大変重要であるということです。
もうひとつ付け加えるとすると、特に発達障がいの人の支援で一般的な「約束事やスケジュールの視覚化」について考えたとき、視覚化するところまでは比較的しっかりやる支援者が多いですが、その先の「意識化」については意外と抜け落ちていないでしょうか?
視覚化して、一旦脳にとどまった刺激(やるべきこと)が、意識化されて(忘れ去られないで)、適切なタイミングで行動化できるためには、そのことをやろうとする意欲や気持ち(モチベーションの維持)が重要になると思うのです。
視覚刺激を活用して、やるべきことを示しても、うまく行動化できない状況が見られた際は、視覚刺激の不十分さや本人の認識の問題にせず、
について、支援者自らが問う必要があるのでないでしょうか?
次に重要なポイントは、1の観察から、2のやることを決める段階と、2のやることが決まったから、3のどのタイミングで、に進む段階は、それぞれ次の段階へ進むには、『判断』が求められることです。
状況の観察が適切にできたとしても、やらなければならない内容が決まったとしても、『やる』と判断しなければ、行動は生まれません。
この『判断』は、私たち職場の人間関係づくりにとって、けっこうやっかいものだと日々感じています。それは、その『判断』というものは、その人個人がもつ『価値観』にほぼすべてがゆだねられるからです!
例えば、やるべきことを正しく理解している2人の支援者がいた場合、「いつやるのか?」については、それぞれの価値観によってそのタイミングにずれが生じることがあり得ます。
私は、このズレを埋める作業は並大抵ではできないことについて、いやというほど現場で経験してきました。おそらくみなさんも、このやりとりでイライラしたり実際に相手と衝突したり、多くのストレス経験があるのではないでしょうか?
この問題を困難にしているのは、そもそも人の価値観というものは、自分自身の人生の中で培ってきた、その人自身のアイデンティティーに関わる根幹的なもの、いわば人生の軌跡そのものなのですから、他人からこうしろあーしろと言われたところで、簡単には「はい、わかりました!」と言うほうが不自然であるからだと考えます。
それなのに、人は、「あいつは、なぜ、おれの言った通りにしないんだろう?」と相手をせめる言動をとる方に走ってしまうのです。
相手が自分の言う通りにしないのは、自分自身に置き替えてみれば容易に想像できる通り、自分の価値観と違うことを要求されたとき、簡単に自分の価値観を変えて、相手の言うことに従うことは、ある意味『自分自身の生きてきた軌跡を否定することになりかねない』からなのです。
このことを認識するようになった私は、自分自身の行動基準として、
『相手の価値観を変えることは求めない』
ことを決め込みました。
そして、価値観の違いは受容しつつ、しかし、
『行動をそろえる』(統一する)
ことに重きを置くようシフトすることにしました。
価値観の違いをそろえることなく、
『実行してほしい行動』
を明らかにして、それを実行してもらうことにだけ注力すると、「なぜやってくれないんだろう?」とか「なにをかんがえているんだろう?」とかでもやもやしたりすることなく、してほしい行動ができたかどうかだけに意識を向けることで、心の負担度がまったく和らぐようになりました(^^)
少し話がそれてしまいましたのでもとにもどします。
この適切な判断ができる支援員さんは、今後、どのような場合に、どのような基準で、どのような判断をするとよりよい支援ができるのかについて、「言語化して」他のスタッフさんに伝達していくことが大切だと思います。このことにより、この事業所の全体的な支援の質は高まっていきます。というより、この作業をやらない限り、よい支援が、このレベルの高いいち支援員さんだけの私物となり、この支援員さんが異動したり辞めたりした場合、よい支援の引継ぎが行われません。
事業所の支援の質を上げる、もしくは担保するためには、この、よい支援をきちんと分析し、一つ一つの要素を洗い出して「言語化」することが必須の作業なのです。
これを大切にする事業所(職員集団)こそ、よりよい支援の質を恒常的に保つことができると考えます。
どのような事業運営、どのような活動においても、「目的」「内容」「方法」を明確にして、一つ一つの要素を整理する(これを応用行動分析では、「課題分析」といいます)ことは、とても大切な手順だと思っています。
私は、この整理について、今後も人材育成の大きな柱としながら、より事業所のお役に立てる働きができることを目指していきます(^^)/